私の息子は現在小学2年生です。同じクラスの子ども達の大半は何かしらのテレビゲーム機を持っており、ゲーム機を持っていない子の方がとても少数です。
平成23年に内閣府が発表した『青少年のゲーム機等の利用環境実態調査』によると、「なんらかのゲーム機の所有率」は、小学生で93.6%にも及んでいるそうです!
我が家の息子も当然、「ゲームが欲しい!」「みんな持ってる!」と言うのですが、夫と長きにわたり話し合った結果、「小学校、中学校の間はゲーム機は買わない」ということに決めました。
ゲームを買わないことに決めた
買わない理由を繰り返し伝えた
小学1年生になってから、周りの友達が持っていることもあり、息子も「ゲームが欲しい」と言うようになりました。そのたびに、「目が悪くなるよ」「運動する力が落ちるよ」など、なぜ買わないのかという理由をきちんと伝えてきました。それとあわせて、夫が休みの日には、キャッチボールやサイクリングなど息子がやりたい遊びにとことん付き合う時間も大事にしてきました。
ゲームが欲しいコールはその後もしばらく続いたのですが、1年生の夏頃から息子の希望で野球を習い始め、土日はほぼ野球づけの生活になりました。また、息子は放課後は学童に通っているので、帰宅後は宿題に忙しくおわれ、実質ゲームをする時間なんてありませんでした。
そういう生活背景もあり、最近は「ゲーム欲しいけど、あってもする時間ないしいらんわ」と言うようになりました。野球をはじめ、体を動かすことが好きな息子にとっては、ゲームよりも外遊びをしている時間の方が楽しいみたいです。
桐蔭高校野球部員の影響
2018年の春夏甲子園で大阪の桐蔭高校が連覇したことも、息子のゲームへの興味がそれる一因になりました。というのも、桐蔭高校の選手たちは息子の憧れの存在。そんな目標にしている選手たちが、「スマホの所持は禁止」「買い物は月に1回のみ。使える金額は1年生が500円、2年生が1000円、3年生が1500円」というとても厳しい制約の中寮生活を送っているということを知り、息子は驚愕。それを機に「トップに立つためには、見えないところで相当な努力をしてるんやなぁ」という話題がよくのぼりました。このことを受けてかどうかはわかりませんが、以降ゲームに対する熱が明らかに下がったなぁと感じました。プロ野球選手を志す息子にとっては響くものがあったのかもしれません。
ゲーム機のない生活
我が家にあるゲーム機らしきもといえば、こんなものだけです。
アンパンマンの子ども用パソコンと、いとこのお兄ちゃんからもらった進研ゼミの付録(九九の練習ができる)です。小学2年生になった息子にとってはあまり魅力的なものではなくなり、今は下の2歳の妹の遊び道具になっています。
「ゲームがないと友達の輪に入れない」ということをしばしば聞きますが、息子は友達は多く、学校で遊ぶ分にはゲームを持っていないからといって困ることも今のところないようです。
息子が学童に入っておらず、放課後に友達と集まって遊ぶ環境にあったとしたら、ゲーム機への執着はもっと強かったかもしれません。
我が家はゲームだけでなく、テレビについてもきちんとルール作りをしています。あらかじめ息子が見たい番組を決めておき、それ以外はダラダラ見ないというものです。平日は、宿題が終わった後に見たい番組を一つだけ(大体30分のアニメ)、休日は何個か見てもOKにしています。
見たい番組は息子が自分で決めるので、親としては見る時間だけ設定しています。小さい頃からこのやり方をしているので、息子も平日1つだけしか見れなくてもブーイングはありません。というよりむしろ、小学校の宿題が結構毎日たくさんでるので、なんやかんやしているうちに眠たくなり、21時前には眠りにつくのでテレビも見ずに寝てしまうこともしばしばあります。ゲームがないことで、規則正しい生活リズムを維持できていることは確かだと思います。
ゲーム障害
2018年6月、世界保健機関(WHO)が新たな国際疾病分類(ICD11)を発表し、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「Gaming disorder(ゲーム障害)」を新たな疾病として認定しました。
ICD11では、ギャンブル障害と同じ「精神および行動の障害」としてゲーム障害を分類しており、下記の症状が12カ月以上続く場合にゲーム障害と定義しています。
1.ゲームをする時間や頻度を抑制できない
2.ゲームが他の関心事や行動に優先する
3.問題が起きても続ける
4.個人、家庭、学業、仕事などに重大な支障が出ている。
ゲーム障害の患者数
ゲーム障害の罹患率は「概算でゲームをしている人の2~3%」と推測されています。数値だけを見るといまいちピンときませんが、小学校や中学校を想定した場合、100人の生徒中2、3人がゲーム障害であると考えると、とても身近なものに感じられます。
国内で初めてネット依存治療研究部門を設けた久里浜医療センターやネット・ゲーム依存外来のある神戸大学附属病院は、共に2カ月先まで予約がいっぱい。患者は中高生の男子が多い。受診する患者は「氷山の一角」にすぎず、受診しない人も大勢いるとみられる。国内に数百万人いるとされるアルコール依存症並みに患者数が多い可能性もある。(2018年11月26日日本経済新聞)
また、ゲーム障害を引き起こす大きな要因の一つにオンラインゲームがあります。
「ネット依存」の専門外来を訪れるのはいわゆる「オンラインゲーム」のユーザーが多い。仲間と共同して何かのゲームをしていく。“君がいなければ、うちのゲームは駄目なんだ”みたいな感じで必要とされる。それらがゲームへの依存を非常に質的に高めている。(NHKハートネットTV「知られざるゲーム障害の実態」より久里浜医療センターの精神科医 樋口進医師の見解)
「依存行動」は、それをするごとに脳に快感物質が出ます。毎日するうちに快感物質が出るのが当たり前となり、出ないのが異常だと認識し、脳がその行動を促すのです。特に思春期の子の脳は、欲望を抑える部分が発達段階にあり、理性が欲望に負けやすい面があります。オンラインで世界中と競い合うランキングにより達成感を与えたり、仲間とのチーム戦で抜けにくくしたり。年齢の区別がないため、中高生も社会人が参加する深夜にゲームをするようになります。(2018年8月13日読売中高生新聞)
久里浜医療センターのホームページ上で、インターネット依存の程度を調べるスクリーニングテストが掲載されているので、関心がある方は一度チェックしてみてください。
脳への影響
ゲーム障害は脳へも影響を及ぼす可能性があるそうです。
「ゲーム障害」を脳科学の観点から見ると、依存になりやすい傾向は衝動を制御できないことと関連がある。
脳の中にはいわゆる『理性の脳』があり、これは通常前頭前野、脳のいちばん前の部分と言われている。この部分が自分たちの行動をコントロールしている。この理性の脳の働きは、年とともにだんだん成熟してくるが、未成年の頃は大人に比べるとただでさえ理性の脳の働きが低い。それと同時に、ゲームをしてどんどん依存行動がひどくなると、一様にこの前頭前野の働きが悪くなる。つまり行動のコントロールがなかなかできなくなってしまうということがある。これは薬物やアルコールでもみられる。(NHKハートネットTV「知られざるゲーム障害の実態」より久里浜医療センターの精神科医 樋口進医師の見解)
身体機能への影響
息子と仲が良かった子が、半年ほど前にゲームにはまり、放課後はひたすら家にこもってゲームをするようになりました。みるみる体型が肥え、先日行われたマラソン大会では、去年は10番台であったにもかかわらず、今年は後ろから2番目という結果でした。
外で活動する時間が減ることにより、肺機能や持久力の低下など、長時間ゲームをすることが体力低下の大きな一因となっていることは明らかと言えます。
また、長時間テレビ画面やネット画面に集中することで、眼精疲労や視力の低下が起こることも容易に想像ができます。
昼夜逆転の生活が、体力低下や食生活の乱れ、睡眠障害を招き、骨密度が低下したり、血液がドロドロになったりする人もいます。(2018年8月13日読売中高生新聞)
ゲームとどう付き合うか
eスポーツが流行語大賞にノミネートされたり、小学生のなりたい職業上位にユーチューバーが入るなど、昔と比べて子ども達を取り巻くデジタル環境は大きく変わっています。スマホもタブレットもゲームもネットも、今の子ども達にとってはとても身近なものになっています。
子どもとゲームの関わり方について頭を悩ますご家庭も多いと思いますが、メディアと人との関わりを研究しているお茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科の坂元章教授はこの点について以下のように説明しています。
ゲームそのものは、与えてはならないというものではない。本人がやりたがっているのにシャットアウトしすぎると、子どもにとって大きなストレスになる。かえって固執させる原因にもなりかねず、そうなると親の目が届かないところでエスカレートしすぎることもあるので、過度に遮断しすぎないよう気をつけたい。
またゲーム機やソフトの貸し借りなどによる友だちとのトラブルを心配する親も多いが、こういったケンカは、ゲームだから起きてしまうのではなく、昔からありがちなこと。借りたらすぐ返すよう教えたり、貸し借りは最初からさせないようにしたりするなど、親がその都度アドバイスしていきたい。
ゲーム中の子どもの暴言(「死ね」「殺す」など)も同様。ゲームに限らず、子どもは外でいろいろな言葉を覚えてくるもの。この場合も、そのたびに「人を嫌な気持ちにさせる言葉は使っちゃだめだよ」などと教えていくことが大切になる。
ソフトやアプリを厳選すれば、ゲーム遊びは気分転換やリラックスにもなる。使い方さえ間違えなければ、昔からある”遊び”と大して変わらない。現代の子どもたちは、生まれた時からネット環境が身近にある”デジタルネイティブ”世代なので、ゲームのようにアナログではない遊びと当たり前に付き合っていくのは、今の時代の自然な姿だ。親としては、見守りながらゲームとの付き合い方を教えて、成長とともに自分の意志でコントロールできるよう導いていきたい。
これを読むと、ゲームが悪なのではなく、適切なルールのもと使う分にはいい効果を得られる可能性も あるということがわかります。ゲームをする場合は、しっかりと決まり事をつくったうえで楽しみたいものですね。
ゲーム以外にも、熱中できることや好きなことがあると、ゲームとも付き合いやすくなるかもしれませんね♪